Aug 7, 2018

alchemy dhyana 603 & Alchemy Dharma 603 "OIKAWA"


プロジェクトは、1本の "GLASTECH RAPIER" から始まった。







Alchemy Tackle Glass Rods の新製品は6フィート3ピースのグラスロッドです。
それも微妙にスペックの異なった3種類を同時に発売することにしました。

アルケミータックルのような小さなメーカーにとっては同じ長さでよく似たスペックのロッドを同時に発売するなんて、販売戦略から考えるとバカみたいな話なのかもしれません。
本来は6フィートのグラスロッドを1本発売するつもりで試作していたのですが、試作したプロトタイプブランクをロッドに組み上げて、それぞれについてキャスティングのテストをして試釣を繰り返しながらブランクの取捨選択を進めていく過程で、どうしてもこの3本が自分で使うために欲しくなってしまったのです。
そんなわけで、無謀にも同時に発売することになったのが以下の3本です。



alchemy dhyana 603 type 1 : 6' 3P #1 LINE (0-1-2 line) ※44g
alchemy dhyana 603 type 2 : 6' 3P #2 LINE (1-2-3 line) ※51g


alchemy dharma 603 "OIKAWA" type 1 : 6' 3P #1 LINE (00-0-1-2 line) ※38g


ここからは、これら3本のロッドを開発するに至ったその経緯の話です。

その発端は私が1本のグラステックを手に入れたことに始まります。
そのロッドは、6フィートのレイピアで、おまけにかなりレアなワンピースロッドでした。
ブランク上に 60 1 1.34 との表記があるので、6ft 1pece 1.34oz という意味でしょう。
適合するラインは実際に使ってみたところでは#2~#3という感じでした。
これが実にいい、ステキなアクションなんですよね。

グラステック "GLASTECH" とは、かの名匠ラス・ピークがグラスロッドの製作を止めた後、グラス・フライロッドの頂点に君臨していたデニス・フランキー("Dennis Franke"が本名ですので、デニス・フランクの方がいいのかも)のブランドです。
そのグラステックも2000年代の半ばにはグラスロッドの製作を止めています。
そのグラステックには レイピア "Rapier" と パラメトリック "Parametric" という2つのシリーズがあって、パラメトリックはパラボリック寄り、レイピアはプログレッシブ寄りのセミパラにそのアクションは設計されているようです。
私は基本的には4番以上のラインを使うロッドでこそパラボリックアクションはその本領を発揮すると考えていますので、2~3番という軽量なラインを使うこの6フィートのレイピアは、私にとってまさに理想のロッドでした。
ただ問題は、このロッドはワンピースなので持ち運びや保管にかなりの難があるということです。

シンプルに考えると、このロッドを3本か4本にぶった切ってフェルールを付けてマルチピース化すればいいのですが(デニス・フランク自身も、当時のブランクの製法から考察すると、ワンピースのブランクを任意に切断してマルチピース化しているはずです)、いまとなってはユーズド品しか手に入らないレアなロッド、それも15万~20万というべらぼうな価格のロッドを切断することにはさすがに躊躇しますよね。

そこで、これまでアルケミータックルとしてグラスロッドを開発した経緯と、今回もあたらしくロッドを開発するための心強い協力を得られたこともあり、このレイピアのコピーロッドをマルチピース化して作ろうという計画が始まりました。

グラステックのブランクは振ったときの感触から判断するとEグラス素材のはずです。
そこでレイピアのコピーを製作する素材としてオリジナルと同じEグラスを選択し、サンプルと同じベンディングカーブが得られるようにそのテーパーと肉厚を設計するわけですが、そこはオリジナルからのデーターの取得から、あらたに3ピースのブランクとして設計を起こすまで、そのすべてをプロの職人さんにおまかせしています。

オリジナルのサンプルがあるロッドとはいえ、新にいちから設計を起こす手間はまったくのニューモデルを作る場合と同じです、いや、オリジナルのデータを拾い上げるという手間が余計に掛かるのですね。そこでせっかくデータを拾い上げるのでそれを有効に利用するために、この1本のロッドをベースとして複数のモデルを試作することにしました。

ひとつは、オリジナルとできる限り同じ物を3P化したブランク。
もうひとつは、ロッドの適合負荷をライン番手で1番落としてより繊細にしたブランク。
これらの2種類のブランクは、オリジナルのグラステックと同じEグラスを素材としています。そしてバリエーションとして、上記のブランクの素材をEグラスからUDグラスに変えたものが2種類。合計4種類のブランクの試作を同時進行させたわけです。

一号試作でOKを出せたブランクや、求めるイメージと違って試作を重ねたブランクがあるのですが、結果的に自分の中で製品化するだけの価値観を持ったブランクが4種類出来上がりました。

603 E Glass Prototype 1”  6 feet 3P  #1 LINE
603 E Glass Prototype 2”  6 feet 3P  #2 LINE

603 UD Glass Prototype 1”  6 feet 3P  #1 LINE
603 UD Glass Prototype 2”  6 feet 3P  #2 LINE

その中で、レイピアと同質のフィーリングを持ったブランクはやはり同じ素材であるEグラスを使った2種類のブランクでした。オリジナルと同じEグラス素材をブランクに使ったブランクは、オリジナルのレイピアをスリーピース化したと言ってもいい、すばらしいロッドとして出来上がりました。グラス素材独特の重さを持ったしなやかさでラインをコントロールするロッドとでも言えばいいのでしょうか。

素材が変わると同じテーパー設計をしても、振ったときにあきらかに違うフィーリングを持ったブランクが出来上がってくるのです。
素材が違えばそれを使った製品も変わる。当然といえば当然のことです。
UDグラスを使った2本は、オリジナルよりも軽く、より敏感に、よりしなやかなロッドになりました。こちらはしなやかに撓るムチのようなフィーリングといってもいいかと思います。

この4本の中でどれを製品として市販するかには悩みました。
私が持っているオリジナルのレイピアそのものといってもいいのは、
603 E Glass Prototype 2”  6 feet 3P  #2 LINE です。
それをベースにラインにして1番手パワーを落とした
603 E Glass Prototype 1”  6 feet 3P  #1 LINE も、レイピアに1番ロッドがあればこんな感じだろうな、と思わせてくれるロッドです。
この2本は、オリジナルに敬意を払うためにも製品化して市場に出そうと決めました。

問題はUDを使った2本です。
かなり悩んだ末、よりしなやかな方を製品化することにしました。

パワー的には強い方から、
603 E Glass Prototype 2”  6 feet 3P  #2 LINE
603 E Glass Prototype 1”  6 feet 3P  #1 LINE
603 UD Glass Prototype 1”  6 feet 3P  #1 LINE
と並びます。

Eグラスの#2は#3ラインも十分使え、渓流や源流域の釣りにも最適なオールラウンダー。
Eグラスの#1は河川から渓流域までの繊細な釣りに。
UDグラスの#1は、0番ラインまでが実用範囲でしなやかだけどパワーもある不思議なフィーリングを持っています。
ただ、アクションは言葉では説明しづらいので、実際にラインを通してキャストしたり、実際の現場で使っていただくことが一番だとは思います。

特筆すべきは、この3本はどのロッドも特にテクニックを必要とすることなしに軽量ラインをごく普通のフライラインのように扱えるということです。


今回新しく作ったEグラス素材のロッドには、サンスクリットで「ディヤーナ」 "dhyana" と名付けました。漢字で書くならば『禅』です。

UDグラス素材のロッドは、これまで通り「ダルマ」"Dharma" です。



"alchemy dhyana 603" type 1
6' 3P #1 LINE (0-1-2 line) ※44g


"alchemy dhyana 603" type 2 :
6' 3P #2 LINE (1-2-3 line) ※51g

標準仕様完成品価格:60,000円(本体55,556円+税)
トルザイトガイド仕様:65,000円(本体60,186円+税)
※オリジナルの竿袋が付属します。
ブランク価格:23,000円(本体21,297円+税)

"Alchemy Dharma 603 OIKAWA" type 1
6' 3P #1 LINE (00-0-1-2 line) ※38g

標準仕様完成品価格:62,000円(本体57,408円+税)
トルザイトガイド仕様:67,000円(本体62,038円+税)
※オリジナルの竿袋が付属します。
ブランク価格:25,000円(本体23,149円+税)


※基本価格のカスタムメイドロッドで使用するパーツは、下記の通りです。



グリップ : フロアーグレードコルク(1/2インチ×10個、ロッドエンドはハードラバー)
リールシート : オリジナルアップロック         
                     金具は「中島保美鋳金工芸美術研究所」製、ブロンズ
ラッピング : 西陣正絹糸


※カスタム仕様は、別途お見積もりさせて頂きます。
※"alchemy tackle" (トルザイトガイド)標準仕様の自重です。


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